経営方針・経営戦略

経営方針

「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業体を目指す」のビジョンのもと、景気動向に業績が左右されることが無いように、銀行業、債権買取回収事業を中核とする総合金融サービスを目指してまいります。収益モデルにつきましては、既存の事業ポートフォリオの価値や将来性を徹底的に見直すことにより収益構造の改善を図ってまいります。今後はこの方針をさらに加速させ、聖域を設けることなく、事業ポートフォリオの価値を見直し、新たな成長戦略を構築することにより、株主価値の最大化に努めてまいります。さらには、コンプライアンスやガバナンスを第一に考えた経営を機軸におき、お客様に付加価値の高い金融サービスを提供するなど地域とともに共存共栄で発展していく企業体を目指してまいります。

中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

(日本金融事業)

信用保証業務では、既存の債務保証残高からの安定的な保証料収入をベースとして、アパートローン保証を中心とした収益構造から、不動産担保ローンやリバースモーゲージ型商品、有価証券担保ローンに対する保証事業等へと軸足を移すべく、新商品の開発(多角化)を推進しております。アパートローンの保証につきましては、スルガショック以降、暫く横這いで推移しておりましたが、2022年12月末で164,539百万円(前年同期比6.4%増)と直近では中古アパートローンを中心に増加に転じており、今後も保証料収入は安定的に計上される見込みです。
日本金融事業における主要な課題、対策は以下のとおりです。

この図は横にスクロールしてご覧ください。

項目 課題 対策
アパートローンに対する保証事業 新築を手掛けるアパート業者については不動産価格(土地)の上昇や資材の高騰の影響で仕入に慎重な状況。また順調であった中古アパートについても、競合先の増加、一部金融機関の取扱い再開等により競争が増加 アパートローンについては新築・中古ともに取扱業者の拡大を図り、関東圏以外のエリアにも取扱いを検討。また他の金融機関との競争力を得るために、取扱業者からのニーズ等を定期的にヒアリングし、当社保証基準についても状況に応じた改定等を検討
不動産担保ローンに対する保証事業 不動産担保ローンに対する資金需要は旺盛な一方で、好調な不動産市況や税制、為替などの市場の変化を反映する形で、アパートローンや海外不動産担保ローンを中心に完済が増加 不動産担保ローンに対する資金需要は旺盛であり、重点施策として不動産関連の保証事業に注力。2022年6月に川崎信用金庫と新たに不動産担保ビジネスローンに対する保証を開始。今後も国内において債務保証残高の増加に努める
その他の保証事業 様々な保証商品の開発(多角化)
  1. リバースモーゲージ型商品に対する保証
  2. 有価証券担保ローンに対する保証
  3. 不動産買取保証
  1. リバースモーゲージは対象エリアの地域課題解決を共有ビジョンとして掲げ、ファイナンス・不動産分野で連携し締結するスキームであり、市場的には未成熟であるが、今後、潜在的需要が高まっていくことが期待され、提携先地域の拡大等を通じた着実な増加が見込める
  2. 2022年3月に株式取得したJトラストグローバル証券株式会社と当社グループの保証事業や海外金融事業とのシナジー効果を活かした新商品の提供やサービス拡充を図る
  3. 提携会社が運営する不動産投資型クラウドファンディングサイトを通じて、同社が所有する対象不動産への買取保証業務を開始

債権回収業務では、全体の市場規模が縮小する中、債権購入価格の高騰が続いておりますが、金融機関等が実施するバルクセールにおいては、当社の過去の回収実績等により、高い利益率が見込まれるため、積極的に買取を進めてまいります。また、特に大型のカード債権は利益率が高く収益貢献に大きく寄与することから、今後も当社グループの高い回収力を背景として安定的・継続的な仕入れを実現し事業拡大を図ってまいります。
また、クレジット・信販業務では、2022年4月に取得したNexus Card株式会社(以下、「Nexus Card」という。)が男性脱毛業界最大手のメンズクリアをはじめとする提携先とエステ、ジム、ゴルフ、クリニックを通じて行っている割賦事業が好調に推移しております。今後も提携先の割賦をNexus Cardが担い、割賦立替金に対して株式会社日本保証(以下、「日本保証」という。)が保証するスキームで収益拡大を図ってまいります。
さらに、証券業務では、2022年3月に取得したJトラストグローバル証券株式会社(旧 エイチ・エス証券株式会社、以下、「Jトラストグローバル証券」という。)が有する機能や顧客層での強みを生かしつつ、投資銀行部門、IPO審査業務の強化を図ってまいります。海外投資のJトラストグローバル証券として、外国株式・外国債券を幅広く取り扱いサービスの差別化を進めており、その戦略を継続してまいります。また、TOKYO PRO Marketや地方証券取引所など大手の参入しない規模感の新規上場を中心に取り組み、差別化をより一層すすめてまいります。さらに、証券会社のツールを取得したことにより、地域金融機関と連携した当社グループの保証事業や海外金融事業とのシナジー効果が発揮され、新たな商品の提供やサービスの拡充を通じて、より一層の事業拡大が図れるものと期待しております。2022年11月に、日本保証において、株式会社西京銀行がJトラストグローバル証券の顧客が保有する預り資産を担保として実行する融資商品(有価証券担保ローン)に対する保証を開始したことを手始めに、今後も当社グループ内でのシナジー効果を高めてまいります。また、ベンチャー起業層のニーズに応えられるプライベートバンキング事業への進出も検討してまいります。


(韓国及びモンゴル金融事業)

韓国においては、総合金融サービスを展開する上でのインフラが整っており、JT親愛貯蓄銀行株式会社、JT貯蓄銀行株式会社において安定的な収益計上を見込んでおります。しかしながら、韓国経済における景気の悪化、ウォン安、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、韓国銀行は物価の高騰を抑えるため2021年8月以降数回にわたって基準金利の引上げを実行しており、これにより貯蓄銀行全体の調達金利が上昇しています。また、韓国全体で延滞増加、個人回生・信用回復増加の傾向があり、金融当局からの任意の引当金積み増しの要請もあります。
このような中で、韓国各社は、翌連結会計年度につきましても、引き続き目標として緩やかな成長をかかげ「量の成長」から「質の成長」を目指し、バランスの取れたRisk-Returnを目標に一定の資産規模を維持し、資産内容の質的な向上を追求してまいります。また、基準金利の引上げに対抗するために、調達金利について他社動向及び当社満期構造など様々な状況を考慮して検討し、貸出金利についても最大限引き上げて取り扱うものの、延滞率を鑑みた収益性で判断して算定するなど収益確保に努めてまいります。貸付資産の収益性を改善するためには、資産健全性の強化(質の改善)が最も重要であり、これに向けて個人信用貸付の貸付審査システムの高度化及び延滞率改善、企業向け貸付の強化を最重要課題として認識し実行してまいりましたが、今後もこの方針を継続するとともに、徹底した延滞管理を通じて貸倒償却費の抑制に向け最大限努力してまいります。
債権回収業務におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年2月以降に延滞発生した債権を売却禁止としていた売却制限が2023年12月末まで1年間延長されたことにより、不良債権買取市場の急激な回復には今しばらく時間を要することとなりますが、今後は、コロナ禍以前に徐々に落ち着きを取り戻すことが期待されるため、従前同様、これまでに培った高い回収力と遵法性を背景に事業拡大を図ってまいります。


(東南アジア金融事業)

インドネシアにおいては、新型コロナウイルスの感染状況が比較的落ち着いた状況で推移しており、新型コロナ対策の活動制限が緩和されたことにより、内需を中心に経済活動が回復し人流も戻りつつあります。インドネシア統計局の発表によると、インドネシア経済はコロナ禍からの経済活動の再開によりプラス成長が続いており、2022年前半は成長率5%台で推移、そして7-9月期はプラス5.72%と加速し、堅調な拡大が続いていることが明らかとなりました。市中金利の引上げによる調達金利の上昇が収益の押し下げ要因となっておりますが、このような中でも、PT Bank JTrust Indonesia Tbk.(以下、「Jトラスト銀行インドネシア」という。)及びJ Trust Royal Bank Plc.(以下、「Jトラストロイヤル銀行」という。)では、積極的な残高増強策により貸出金残高が増加しており、また、各種キャンペーンの効果により預金残高も増加、流動性が改善され、COF(預金コスト)も低下しております。特にJトラスト銀行インドネシアにつきましては、長く営業損失が続いておりましたが、優良な貸出債権の積み上がりにより営業収益が増加するなど業績も上向きとなり、営業損益についても通期で黒字を確保するなど利益を牽引していくステージに入ったものと考えております。
東南アジア金融事業における主要な課題、対策は以下のとおりです。

項目 課題 対策
貸出債権の積み上げ 収益基盤の強化 貸出増強に向けたミーティングをビジネス部門と日次実施し、ビジネス/審査部門の連携強化により体制を見直し、不良債権リスク低減を図りつつ積極的にローン残高、社債残高の積み上げを図る
自己資本の拡充 規制改正に伴い、インドネシア金融庁(OJK)が自己資本比率11.0%(規制上の基準値)の達成を要請 Jトラスト銀行インドネシアへの資本増強やリスク資産の圧縮等により、2022年12月末の自己資本比率は14.82%となり、現状クリア。今後もOJKの要請に柔軟な対応が必要
マーケティング活動、流動性の確保
  1. 1億人獲得プロジェクト
  2. COF(預金コスト)の引下げ
  3. ローン金利の引上げ
  4. 住宅ローン提携
  1. オンライン及びオンサイト上でのイベントや、各地でのキャンペーン等を通じて新規預金口座獲得を推進、好意的なブログやSNSを使ったブランディング戦略を展開
  2. 決済系口座の獲得を推進し、流動性預金の残高かさ上げによりCOFの引下げを図る
  3. 政策金利の断続的な引上げによる調達金利の上昇に対し、対象顧客リストを作成しローン金利の引上げ交渉にて対応
  4. 日系大手デベロッパーの現地法人及びインドネシア大手デベロッパーと住宅ローン業務提携を展開

また、PT JTRUST INVESTMENTS INDONESIAでは、買取りを行った不良債権について、回収人員や法的回収人員の増員、法的回収の強化等による回収金額の最大化を図っておりますが、競売手続の長期化や担保不動産の売却鈍化により、債権回収がやや低調に推移しております。しかしながら、今後コロナ禍から経済活動が再開されるにつれ、不動産売却市場の活性化が図られ債権回収も増加し好転していくものと考えております。

カンボジアにおいては、アメリカ金融政策の影響(政策金利の段階的利上げ)により市中預金金利が上昇しているうえ、競合銀行も増加していることから、預金獲得競争の激しさが当面継続する見込みであります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大によるカンボジア国立銀行(NBC)からの返済猶予等条件緩和の要請が終了し、返済猶予済顧客への追加引当をNBCが要請してきているなど、今後、不良債権が顕在化してくることが懸念されます。しかしながら、世界銀行発表のカンボジア国内経済成長率は2020年マイナス3.1%、2021年3.0%、2022年予測4.5%と経済成長率は上昇が続くと見込んでおり、銀行業界においても同様に成長が見込まれております。カンボジアの資金需要は堅調であり、Jトラストロイヤル銀行につきましては、預金残高の増加にあわせて貸出金残高もビジネスバンキング部門を中心に堅調に推移しており、既に成長モードに移行しているものと認識しております。足元では、市中預金金利の上昇によりCOFが上昇中のため、新規融資顧客や再貸顧客へ貸出レートの引上げによる収益確保が課題となっておりますが、今後も、業容拡大方針を維持し、COFの低下を意識した金利の設定・管理や、低金利預金の獲得強化、新規顧客層の開拓強化、大企業取引との取引拡大、富裕層向け商品や各種普通預金商品のラインアップの充実、モバイルアプリ、ネットバンキングのサービス拡充等を通じて安定収益の確保を目指してまいります。


(投資事業)

投資事業においては、Group Lease PCL(以下、「GL」という。)に対する債権回収に努めてまいります。今後も裁判費用等の回収コストを抑制しつつ、回収強化を図ってまいります。なお、GLに対する債権につきましては、すでに全額引当を行っていることから、回収がなされる都度収益計上されます。


(その他)

不動産事業において、Jグランド株式会社(旧 日本ファンディング株式会社、以下、「Jグランド」という。)では、不動産と金融のノウハウで築く投資用一棟マンション「J-ARC」シリーズ、税金対策を検討されている方向けの収益不動産、IoTを標準搭載した最新の収益不動産「ROBOT HOUSE」、海外(ハワイ)の収益不動産等を展開しており、今後も富裕者向けビジネスの拡大を図ってまいります。また、2023年2月1日を効力発生日として、当社を吸収合併存続会社、株式会社ミライノベートを吸収合併消滅会社とする吸収合併を行い、株式会社グローベルスを取得したことにより不動産事業の業容が拡大いたしました。そこに日本保証の保証業務が加わることにより債務保証残高の増加が期待されるなどシナジー効果が発揮され、更なる業績拡大が図れるものと考えております。Jグランドにおいては、富裕層を対象とした投資用物件をメインの事業に据えることで、事業規模が順調に拡大することが見込まれており、今後の信用力の向上を目指して上場に向けた準備を開始していきたいと考えております。

当社グループは、利益還元について近年は東南アジア金融事業への資本増強を含めた資本政策と株主還元とのバランスをとりながら決定してまいりましたが、業績も安定してきたことから、配当については、通期14円(中間1円、期末13円)とし、増配とさせていただく予定であります。また、より一層の株主還元の充実を図るため、極めて高い優待利回りとなる株主優待を再開させていただくことで、株主の皆様の期待に応えていきたいと考えております。